紀元前3000年頃、車輪はメソポタミア文明期に発明されたといわれている。
チグリス・ユーフラテス河の恵みで肥沃な土壌を持ち、早くから農業が発展したこの地域では、金属・木材・石材などの資源が不足していた。これらの交易で商業が発展していったが、その経済発展を支えたのが、大量の荷物を楽に速く運ぶことのできる車輪の発明だった。紀元前2000年頃、軽量化と強度向上のためにスポーク構造が発明される。車両は荷車だけでなく、戦車などにも活用され、特に戦車では、戦闘時における高い機動性を確保するため、従来を上回る耐荷重能力、横方向荷重、耐久性、軽量性、靭性などの性能が求められ、木製ながら力学的合理性を持つスポーク構造へと進化していった。
そして、紀元前700~500年頃。欧州に鉄器をもたらしたハシュタット文化により、鉄を巻いた車輪が発明された。斧や鉄剣、鉄製農具に加え、馬と戦車を用いて400年に渡り欧州を支配したハシュタット文化において、鉄を巻いた車輪の強度・耐久性向上は極めて大きな影響を残した。スポークの発明により構造の改革が起こった後に、素材改革によって車輪はさらに発展していった。
時は過ぎ、1867年。ソリッドゴム製タイヤが発明される。
2000年以上も大きな進化がなかった車輪に初めてゴムが使われる様になった。空気が入らないソリッドゴムであり、後の空気入りタイヤの様な衝撃吸収能力がなかったため、低速車両に主に用いられた。世界初の自動車と言われるベンツ・パテント・モトールヴァーゲンにもソリッドゴムタイヤが採用されている。1888年、英国の獣医師、ジョン・ボイド・ダンロップによって、自転車用空気入りタイヤが発明された。従来の鉄輪や木製、ソリッドゴムなどの衝撃吸収力の乏しいタイヤに対し、乗り心地を大きく改善し、高速走行を可能にした空気入りゴムタイヤは、後の自動車の発展に大きく貢献し、ダンロップは2005年に自動車殿堂入りを果たした。
1924年、エットーレ・ブガッティが自動車用として世界初のアルミホイールを発明した。1926年のグランプ リ・チャンピオンを含む1000勝以上を挙げた傑作レーシングカー、ブガッティ・タイプ35には高剛性、軽量、高放熱性を備えるアルミホイールが与えられた。ブレーキドラムをホイールに鋳込むなどの革新的な手法が用いられている。